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巨人のエース・戸郷翔征は根尾昂、吉田輝星世代 「ドラフト6位指名」の意外な理由とは

 

世界一奪回にも貢献


今や巨人のエースとして先発陣をけん引している戸郷


 首位・阪神を4.5ゲーム差で追いかける3位・巨人。エース・戸郷翔征が勝ち続けることが逆転優勝の条件になる。

 高卒2年目の2020年から先発ローテーションに定着し、昨年は自己最多の12勝をマーク。171回2/3を投げ、防御率2.62もシーズン通じて自身最高の数字だった。最多奪三振(154)のタイトルを獲得し、今年3月には侍ジャパンでWBCに出場。決勝・アメリカ戦に救援登板し、メジャーを代表する強打者のマイク・トラウト(エンゼルス)、トレイ・ターナー(フィリーズ)からフォークで空振り三振を奪うなど1回無失点の快投で、世界一奪還に貢献した。

 WBCが終わり、すぐにシーズンに突入。疲れがないと言ったらウソになるだろう。侍ジャパンに出場した投手たちの中には状態が上がらず苦しむケースが少なくない中、戸郷は白星を積み重ねている。11試合登板して6回を投げ切れなかったのは2試合のみ。5月9日のDeNA戦(新潟)で2失点完投勝利をマークすると、同月24日のDeNA戦(東京ドーム)でも5安打完封勝利を飾った。

交流戦でも好調維持


 交流戦でも好調を持続し、6月14日の西武戦(東京ドーム)で6回を7安打1失点と踏ん張り、交流戦トップタイとなる3勝目。リーグトップの8勝目を挙げた。2回まで45球を費やしたが、その後は打たせて取る投球で試合の主導権を手繰り寄せる。戸郷の登板試合に打線が活発なのはテンポの良さも影響しているだろう。11試合登板で8勝1敗、防御率2.45。他球団のスコアラーは昨年と投球スタイルの変化を指摘する。

「昨年まではすべての打者から三振を狙うぐらいの勢いで目いっぱい投げている印象でしたが、今年は打者との力関係や試合展開を読みながら、メリハリをつけて投げている感じがします。力みがないので140キロ台前半の直球でもキレがある。勝負どころではギアを入れて球速が上がるので打者は対応が難しくなる。スライダーやフォークの精度も高い。スタミナも十分で総合力の高い投手です」

己の力で切り拓いた道


 戸郷は00年生まれで、高校時代にスターだった根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、吉田輝星(日本ハム)と同世代だ。戸郷も決して無名だったわけではない。聖心ウルスラ学園高では2年夏に甲子園出場。初戦の早稲田佐賀高戦で完投勝利を挙げている。3年夏は県大会準々決勝・日章学園高に敗退。だが、同年8月に行われたU-18日本代表との試合で宮崎県選抜の一員として救援登板し、5回1/3を投げて9奪三振をマーク。味方の失策で2点を奪われたが、最速149キロの直球で存在を強烈にアピールした。

 ドラフトではU-18の中心だった根尾、藤原、吉田がドラフト1位で指名される中、戸郷の名前がなかなか呼ばれない。巨人にドラフト6位で入団し、己の力でサクセスストーリーを切り拓いた。

 アマチュア野球担当だったスポーツ紙記者は、「ドラフト6位だったのが不思議に感じますが、当時は戸郷の変則的な投球フォームに、スカウトの評価が割れていました。『あの投げ方はケガをする』、『伸びしろを考えると厳しい』という指摘が少なくなかった。戸郷を評価していたスカウトも『4年後に先発ローテーションに入れる』という見方だった。蓋を開ければ高卒2年目から一軍に定着し、この世代で一番活躍している。巨人のスカウト陣の慧眼が評価されるべきでしょう」と語る。

 侍ジャパンの国内合宿で、変化球の助言を行ったダルビッシュ有(パドレス)が戸郷の投球フォームを絶賛していたことを考えると、一部のスカウト陣の評価が低かった理由が意外に思える。選手の力量、将来性を見極めるのはそれだけ難しい作業なのだろう。

 巨人で同学年には同期入団の横川凱直江大輔や、大卒1年目の田中千晴松井颯萩尾匡也門脇誠ら今後のチームを有望株たちがズラリ。互いの活躍が良い刺激になっているだろう。誰もが認める絶対的なエースを目指し、戸郷は右腕を振り続ける。

写真=BBM
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